雨の日が苦手だった、私たちは

 突然の行動に呆然とする西に、萌衣は小さく会釈した。再び高瀬の方を見るものの、どんな表情で歩いているのか全く分からない。

 繋いだ手の感触に、萌衣は一瞬だけ息を詰めた。

 廊下の角を曲がったところで、萌衣は慌てて声を出す。


「た、高瀬さん……! 他の人にも、見られちゃいます!」
「え? 何を」
「その……手!」
「……あ、悪い」


 手を繋いでいたことに、まるで今気付いたような様子だった。
 きまり悪そうに、高瀬は視線を斜め下に向けた。
 萌衣もふう、と胸を撫で下ろす。仕事では迷いのない高瀬も、今は気まずいのか何も話さない。

 気まずい空気をとりなすように、萌衣が口を開いた。
 
 
「高瀬さん、私のために、庇ってくれたんですか?」
「いや……あー悪い、勝手に口出して。でも、朝比奈ばっかりが引き受けるのは違う気がして」
「ありがとうございます……。私、西さんの前だと萎縮しちゃうんですよね、ああやっていつも色々と押し付けられてきたので。だから、高瀬さんに助けられて正直助かりました。高瀬さんって、」


 思ったまま喋ろうとしてしまい、はっとして口をつぐむ。高瀬は首を傾げて、こちらの様子を伺っていた。


「……高瀬さんって、優しいんですね」
「優しい? 俺が?」


 確かに、高瀬に正論を言われた時は、言葉が詰まった。それでも——。


「はい、だって、私が困ってそうだなと思って、声をかけてくれたんですよね? やっぱり、高瀬さんは優しいですよ」
「いや、それは……初めて言われたな」


 それに対して「そうですか?」と返すと、高瀬の顔がほんの少し赤く染まったように見えた。
 褒められて、きまり悪そうに視線を逸らす高瀬は初めて見る。

 高瀬の様子を見て、なぜか、萌衣の胸の奥がじんわりと温かくなった気がした——。



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