雨の日が苦手だった、私たちは

 社員用カフェテリアで席を陣取り、ランチプレートを持った高瀬に手を振る。向かい合うようにして座り、なんとも言えない表情をする彼の顔を覗き込んだ。


「高瀬さん、どうしました?」
「いやー……なんか、ここに来るの久しぶりだなと思って」
「そうですよね。高瀬さん、お昼はー……オムライスプレートですか?」
「ん? そう、なんとなく」
「え、美味しそうですね。私も社食にすれば良かったかなぁ」


 二人で「いただきます」と手を合わせ、早速食べ始める。萌衣は少し迷ってから、高瀬に謝った。


「高瀬さん、すみません。ランチミーティングなんて嘘をついて。いつもご飯を食べてなくて、心配してたんです。でも、もし何か理由があるんだとしたら、余計なお世話だったかなって……今になって反省してました」
「いや、ご飯食べると午後眠くなるっていうのはあったけど。今まで忙しすぎて、だんだんそれに慣れてきた感じかな」
「やっぱり、そうだったんですね……」


 高瀬なりに自分のルールがあったのだと、萌衣は今になって理解する。
 それは、午後も集中して仕事ができるように、あえてそうしていたのだと分かった。そう思うと、『やっぱり余計なことをした』と後悔が押し寄せる。

 
 ――萌衣はいつも、先回りして動く癖がある。

 でもそれは、『相手にとって良いだろう』と思える範囲の、ほんの些細なことしかしない。
 こうして自分の意思を強く押し出すのは、初めてかもしれない。

 落ち込む萌衣に気づいたのか、高瀬はふわりと笑った。


「とはいえ、食べないことに慣れるのはちょっとまずいなとは思ってた。気遣ってくれて、ありがとな」
「……いえ、良かったです」


 高瀬の笑顔を見て、萌衣の落ち込んだ気持ちは床に落ちる前に掬い上げられた。

 今の笑顔は、よく見かける『爽やかな営業スマイル』じゃない。萌衣は胸をきゅっと掴まれたような気がして、なんだか落ち着かなかった。


「そういえば、朝比奈のお弁当は何が入ってる?」
「えーっと、卵焼きとか、煮物とか……あ、これは作りおきしてる、きんぴらごぼうです。普通のご飯ですよ」
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