雨の日が苦手だった、私たちは

 それくらいじゃ割に合わないと、高瀬はまだ納得していない様子だったけれど。


「よし、それじゃあ……高瀬さんのご飯問題は解決ですね! あ〜すっきりしました」
「そんなに気にしてたのか?」
「はい、もし高瀬さんが倒れたらって。もちろん心配ですよ」
「そうか……心配してくれて、ありがとな」


 高瀬の胃袋までサポートすることになった萌衣は、『高瀬さんの役に立つぞ』と心の中で決意を固める。

 その後も、ご飯を食べながら二人で喋っていると、あっという間に時間が過ぎていった。
 こんな風に、高瀬と気安く会話する関係になるとは……三週間前には、一ミリも想像していなかった。

 再びお弁当の話になり、萌衣は事前調査とばかりに質問を投げかける。


「高瀬さん、苦手なものってありますか? お弁当を作る上で、確認しておきたくて」
「いや、特にないかな」
「そうなんですね、分かりました」
「……朝比奈は何が好きで、何が苦手なの?」
「え、私ですか?」


 まさか自分に聞かれるとは思わず、萌衣は瞬きを繰り返す。
 なぜ高瀬が質問をしてきたのか、萌衣には分からなかった。でも、ここは素直に答えることにした。


「うーん、煮物とか、肉じゃがとか、そういうものが好きですね。苦手なものは、激辛料理とか?」
「激辛料理、食べることあるのか?」
「前に同期の子と食べて、その日は一日寝込んじゃいました」
「ハハ、試そうと思ったのがすごいよ。朝比奈って、意外と好奇心旺盛なんだな」


 そう言って笑う高瀬に、萌衣はまた胸の奥が弾んだような気がした。
 

***


 高瀬とランチをした後は執務室に戻り、いつも通り仕事をこなしていった。
 この日、いつもと違うのは、夜に萌衣の歓迎会があるということだ。


「朝比奈、上がれそう? 主役は遅刻しない方が良いだろ。もし何か残ってるものがあるなら、代わりに対応してから行くし」
「もう大丈夫です。高瀬さんは行けそうですか?」
「俺も、もう終わる」


 二人でパソコンを閉じ、外に出る準備をする。
 別のデスクの島にいる石原が、こちらに向かって声をかけてきた。
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