雨の日が苦手だった、私たちは
みんなの注目を集めているのは、今回の幹事である柳だ。手をマイクのようにして、場を取り仕切っている。
いつの間にか、貸し切っているスペースが人でいっぱいになっていた。
萌衣を含め新メンバーを紹介してから、乾杯の音頭は部長がとった。ビールジョッキを持ち上げ、みんなで乾杯する。
ちなみに、隣にいる高瀬が手にしているのは、オレンジジュースだ。
(高瀬さん、本当にお酒を飲まないんだ……聞かれたら、いつもどう答えてるんだろう?)
その隣では、西がビールジョッキを持ち上げて、テンション高く「かんぱーい!」と言っていた。
西以外にも、他部署の女性陣がちらほら各席に混ざっている。いつも西とつるんでいる、社内でも目立つ女性グループだ。
髪も爪も綺麗に整えられていて、とても華やかで。
萌衣は『同じ会社にいても、自分とは遠い世界の人たちだなぁ』と思った。
「あれー、高瀬さん。お酒飲まないんですか〜? せっかくのお祝いの席なんだから、気を遣わず飲めば良いのに〜!」
「いえ、いつも介抱係なので大丈夫です。この後仕事も残ってるので」
「えーっ、ちょっとこの部署、高瀬さんばっかりに働かせ過ぎじゃないですか? さすが、トップセールスは違いますよね! あ、でも。私がもし酔っても、高瀬さんが助けてくれるのかな〜」
西の言葉に、近くにいた社員の顔が引き攣る。
「自分が高瀬を持ち帰る」と周りを牽制しているように聞こえて、一部の女性社員は引いているのだ。
男性陣からすると、西の言い方は『高瀬を持ち上げて、他の社員を下げる』ようにも聞こえる。
確かに高瀬はトップセールスではあるけれど、他の社員だってどんどん成果を上げている。
だからこその部署拡大、増員だというのに。
萌衣は、高瀬のお酒の断り方に「なるほど」と思うものの、周りの温度が一気に下がっていくのを察して焦り始めた。
そんな萌衣に気付いてか、高瀬は持ち前のトーク力を発揮する。
「そうだ、田中課長、この間の案件はどうやって獲得したんですか? 俺も一回アタックしたことがあるんですけど、全然手応えがなかったです。ぜひ、秘訣を教えてくれませんか」