雨の日が苦手だった、私たちは
「あぁ、あの案件な。いやーそれが先方とゴルフで意気投合してなぁ」
あの高瀬に持ち上げられて、田中は嬉しそうに頭をかいている。
周りの若手社員は、ほっと胸を撫で下ろした。西が場を冷やした時は、皆どうなることかと思ったようだ。
(すごい、さすが高瀬さんだ……。お酒を一緒に飲むことが重要なんじゃなくて、みんなが気持ちよく飲めることを考えてる……)
感心した萌衣は、高瀬の姿に影響を受けて空いたジョッキをてきぱきと回収していく。
安藤にも「朝比奈ちゃん、主役なんだから座ってゆっくり飲んで!」と言われたものの、結局のところ萌衣と安藤、柳の三人で動き回っていた。
皆がスムーズに飲み食いできるよう、動き回る三人。そして、皆が楽しく飲めるよう場を回す高瀬と石原。五人がチームとなって連携していた。
やっと自分の席に戻った萌衣は、ふいに聞こえた西の声にぎょっとした。
「高瀬さんって、彼女いないんですかー?」
甘ったるい声とともに、西が腕に絡みついた。
高瀬は一度だけ視線を落とし、ほどくでもなく、受け止めるでもなく、ほんの少しだけ腕を引いた。
その“一瞬”が妙に長く感じた。
(……受け流すんだ、こういう時は)
胸の奥がきゅっと、小さく縮む。
萌衣は、その姿から目が離せなかった。高瀬が何と答えるのか、一体どういう対応をするのか気になってしまう。
そして高瀬は表情を変えることなく、西の問いに答えた。
「彼女、いませんよ。まぁ、仕事が恋人みたいなものなので」
「えぇーそうなんだ〜!」
「……高瀬さんのそういう話、俺初めて聞くかもしれないです」
大袈裟な反応を見せる西と、意外にも恋バナに乗り気な石原。
萌衣は、目の前にあるハイボールをこくりと流し込む。けれど耳は、三人の会話にしっかり向いていた。そのまま、西の質問攻めが続く。
「高瀬さんって、見た目は爽やかなのに中身はドライって、有名ですもんね〜」
「西さん、結構突っ込みますね」