雨の日が苦手だった、私たちは
「まぁ、その噂は当たってると思いますよ」
「えーそうなんですか〜?」
「仕事優先なのは否定しません」
そう言った高瀬は、突然、視線を萌衣の方に向けた。
「朝比奈、ちゃんとご飯食べれてる? ずっと動き回ってただろ?」
「は、はい……! 大丈夫です、ありがとうございます……!」
それを聞いていた西が、「えぇ〜」と不満げな声を出す。
「朝比奈さんのことをそうやって心配できるんだから、実はドライじゃないと思うんですよね〜。あえてドライな役を演じてるとか? 大体、自分のことしか考えてない人はトップセールスになれないと思うんですけど」
「それは俺も同意ですね。高瀬さんは数字に対してストイックというか、とにかく自分に厳しすぎるんですよ」
「いや、俺はみんなが思うほどできた人間じゃないよ」
そして高瀬はちらりと、萌衣の方を見た。
「な、朝比奈?」
「え? 私ですか……?」
「朝比奈、俺の弱みを握ってるだろ?」
何か企むような笑顔を向けられ、萌衣の胸が小さく跳ねる。弱みという言い方が、あまりにも意味深だ。石原がにこにこと笑う一方で、西のテンションは明らかに下がっているように見えた。
「えーっ、なに? 弱みって。朝比奈さんは高瀬さんの何を知ってるの?」
(弱みって……あ、お酒が苦手なこととか? これからお弁当を作ってあげることは、別に弱みじゃないし……)
ここ最近の高瀬とのやりとりを、必死に頭の中でかき集める。
西の質問に、何と答えれば良いのか分からない。今、萌衣を困らせている張本人――高瀬に、助けを求めるように視線を送る。
高瀬と目が合うと、彼はふっと笑ってから西の方をちらと見た。
「朝比奈とは外回りに行くこともあるんですけど、この前、急に雨が降ってきちゃって。俺、雨が苦手なんですよ」
「なーんだ、そんなこと」
「えー、高瀬さん、なんで雨が苦手なんですか? 名前が太陽みたいな名前だからですか?」
「あはは、石原くんってば、そんなことあるー?」