雨の日が苦手だった、私たちは

 苦手なものは雨——その答えを得られた西は、ほっとしたように満足げに笑っている。

 
(お酒が苦手なことは、誰にも言わないんだ……)


 萌衣の頭に、自分が少しは高瀬にとって特別なのかもしれない、という考えが一瞬よぎる。
 でも、それは独りよがりな妄想だと、心の中で首を振った。


「えー高瀬さん、何で雨が苦手なんですかー? まぁ私も雨は嫌いなんですけどー」
「雨が降ると、交通機関が乱れたり服も濡れたりして、予定通りに物事が進まないじゃないですか。まぁ、事前に分かっていれば、ある程度それを見越して準備するんですけど」
「なるほど、高瀬さんらしいですね〜」


 話を聞いていた石原も、高瀬の理由に納得したらしい。西は機嫌良さそうにハイボールを口にした。


「私はー雨が降ると湿気でヘアスタイルが乱れるし、お気に入りの服が濡れたりして、最悪〜って思っちゃいます。だから、高瀬さんの気持ちが分かるなぁ〜」
「俺、雨が嫌いとは言ってないですよ?」
「え?」


 ぴしゃりと、西に線引きするような言い方をする。
 西も石原も、いつの間にか会話に参加する形になっていた萌衣も、三人で首を傾げる。

 苦手と嫌いは、違うということ? と、三人の頭の上に吹き出しが浮かんでいるようだった。


「俺、雨自体は嫌いじゃないんです。雨が降る前の独特の静けさというか、空気が澄んでしんとした時間とか。どちらかというと、好きですね」
「そ、そうなんだぁ……へぇ〜……高瀬さんって意外とロマンチストなんですね〜」
「そういえば。西さん、俺の同期の下島に確認できましたか?」
「えぇっ……と」


 突然、この前の引き継ぎの話になった。西は「えーっと、どうだったかなぁ」と言って目を泳がせている。


「ちゃんと確認しておいてくださいね。下島には言っておいたんですけど」
「え……あ、そうなんですねぇ! ごめんなさい、忙しくてまだ聞きに行けてなかったんです。高瀬さんってば、私のためにそんなに根回しまでしてくれて……本当に優しいですねっ!」
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