雨の日が苦手だった、私たちは
 高瀬が歩みを早めるのに合わせて、萌衣も大きめに一歩を踏み出す。いつもより早く足を動かせば、自然と鼓動も早くなっていく。

 胸が弾むのは高瀬といるからか。それとも早足で歩いているからか……。萌衣は、深く考えないことにした。


「最近、俺も雨の日はそわそわするようになった」
「えぇ、高瀬さんもですか?」
「あぁ、なんでだろうな?」
「そうですね。考えることが増えるから、ですかね?」
「んー……どうなんだろうな、確かに考えることは増えるんだけど……」


 いつもすぐに答えを出す高瀬にしては、珍しく歯切れが悪い。
 あの高瀬にも、うまく言葉にできないことがあるんだと思うと少し驚きだ。

 どうしたんだろうと小さく首を傾げるが、高瀬は黙ったまま歩き続ける。萌衣は、答えを急がせるようなことは言わなかった。

 
『……雨ですが、今はそわそわしていないです』

 
 ふと、先ほど自分が言った言葉を思い出す。

 高瀬と予定より少し長く一緒に過ごしたのも、思いがけず普段とは違う時間を過ごせたのも、たまたま雨が降っていたからで。

 かつては『落ち着かない』だけだった雨の日が、今日は、少し心地良く感じられた——。


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