雨の日が苦手だった、私たちは
ふふ、と笑ってしまう。高瀬との会話に夢中になっていて、周りから注目を集めていることもすっかり忘れていた。
あの“鬼の高瀬”が笑っているのだ。
高瀬に関心がある人なら尚更、『今なら話しかけても良いかも』と思うのは自然なことだった。
「あのー高瀬さんっ」
「はい?」
すんと、高瀬の顔が通常モードに切り替わる。
さっきまでの笑顔はどこへやら……。
高瀬に話しかけている女性社員二人組は、彼と話すことができて嬉しいのだろう。喜色満面といった様子だ。
そして、高瀬の手元にあるお弁当箱を覗き込んだ。
「えー高瀬さん、珍しく社食にいると思ったら、お弁当なんですか? もしかして、彼女さんが作ってくれたとか?」
隣にいた女性社員が「えぇ〜」と残念がるような声を出した。でも、今まで浮いた噂ひとつなかった高瀬だ。隠すのがうまいのか、仕事一筋で本当に彼女がいなかったのか。
どちらにせよ、ここは「いない」とはっきり言うのだろう。
(そういえば、高瀬さんって彼女いるのかな……?)
今まで考えたことがなかった。
萌衣は存在感を消すように息を潜めて、目の前のやり取りを傍観する。すると、高瀬は突然、笑顔になった。
「そうなんです、実は彼女が作ってくれて」
「えぇっ!」
「……えぇっ!?」
つい、大きな声を出してしまった。
高瀬も女性社員も、萌衣の大きな声に驚いたような顔をした。でも、その社員は高瀬に根掘り葉掘り聞きたくて仕方がないらしく、すぐに視線を萌衣から高瀬に移した。
「高瀬さんに彼女がいるなんて、初めて聞きました! お弁当まで作ってくれるなんて、本当に素敵ですね。もう同棲されてるんですか?」
「いえ、最近付き合い始めたばかりなので。あまり皆さんに言わないでもらえると助かります」
(す、すごい……よくそんなにすらすらと嘘が……)
呆然と見ていると、高瀬がちらとこちらを見て、含みのある笑みを浮かべていた。「言わないで」と言っても、きっと噂はすぐに出回るのだろう。あの女性社員はおしゃべりで有名な人なのだから。
あの“鬼の高瀬”が笑っているのだ。
高瀬に関心がある人なら尚更、『今なら話しかけても良いかも』と思うのは自然なことだった。
「あのー高瀬さんっ」
「はい?」
すんと、高瀬の顔が通常モードに切り替わる。
さっきまでの笑顔はどこへやら……。
高瀬に話しかけている女性社員二人組は、彼と話すことができて嬉しいのだろう。喜色満面といった様子だ。
そして、高瀬の手元にあるお弁当箱を覗き込んだ。
「えー高瀬さん、珍しく社食にいると思ったら、お弁当なんですか? もしかして、彼女さんが作ってくれたとか?」
隣にいた女性社員が「えぇ〜」と残念がるような声を出した。でも、今まで浮いた噂ひとつなかった高瀬だ。隠すのがうまいのか、仕事一筋で本当に彼女がいなかったのか。
どちらにせよ、ここは「いない」とはっきり言うのだろう。
(そういえば、高瀬さんって彼女いるのかな……?)
今まで考えたことがなかった。
萌衣は存在感を消すように息を潜めて、目の前のやり取りを傍観する。すると、高瀬は突然、笑顔になった。
「そうなんです、実は彼女が作ってくれて」
「えぇっ!」
「……えぇっ!?」
つい、大きな声を出してしまった。
高瀬も女性社員も、萌衣の大きな声に驚いたような顔をした。でも、その社員は高瀬に根掘り葉掘り聞きたくて仕方がないらしく、すぐに視線を萌衣から高瀬に移した。
「高瀬さんに彼女がいるなんて、初めて聞きました! お弁当まで作ってくれるなんて、本当に素敵ですね。もう同棲されてるんですか?」
「いえ、最近付き合い始めたばかりなので。あまり皆さんに言わないでもらえると助かります」
(す、すごい……よくそんなにすらすらと嘘が……)
呆然と見ていると、高瀬がちらとこちらを見て、含みのある笑みを浮かべていた。「言わないで」と言っても、きっと噂はすぐに出回るのだろう。あの女性社員はおしゃべりで有名な人なのだから。