雨の日が苦手だった、私たちは

晴れのち、雨。逃げ場はなし?

 高瀬と洋食ランチの約束をした週末、萌衣は自宅の姿見の前に立っていた。
 私服にアクセサリーを合わせ、ぶつぶつと独り言を言いながら一人ファッションショーだ。


「うーん、こんな感じで大丈夫かな……いつもの延長に見せたいけど、失礼にはしたくないし……。ちゃんとした格好しなきゃ……」


 結局、萌衣が選んだのは淡いブルーのワンピースだった。
カーディガンを羽織り、パールのイヤリングをつけて、低めのヒールを履けばコーディネートは完成だ。

 話を聞いた感じでは高級店ではなさそうだけど、どんな店でも浮かない服装にしておいた。

 家を出て、外を歩きながら空を見上げる。雨の匂いはしない。でも、今日は午後から雨が降る予報だ。空はすでに曇り空だった。

 萌衣は鞄に入っている折りたたみ傘を確認する。予備のつもりで入れていた傘が、今日は二本になっていた。


(さっき急いで入れちゃったけど、もう一本あったんだ。もしかしたら……高瀬さんまた持ってないかもしれないし、ちょうど良いかな)


 萌衣は視線を前に戻し、また一歩踏み出した。空は曇っているけれど、足取りは軽い。
 約束の場所に到着すると、既に高瀬が立っていた。萌衣の姿に気付いたらしく、こちらを見て手を振っている。


(高瀬さんの私服、初めて見たけど……)


 ジャケットにパンツスタイルという、至ってシンプルな装い。仕事の時のスーツ姿とは違い、どこか肩の力が抜けたような印象を受けた。


「朝比奈」
「高瀬さん、お待たせしました!」
「いや、俺もついさっき着いたところ」


 そう言って、じっと萌衣の全身を見ている。
 萌衣が少し首を傾げると、「あぁ、悪い」と笑って謝った。


「なんか、いつもと雰囲気が違うなと思って」
「そう、ですかね」
「……それじゃあ、行くか?」
「はい、お願いします」


 気を取り直して、一緒に歩き始める。
 高瀬に案内された洋食店は、本当に会社からも近かった。
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