雨の日が苦手だった、私たちは
 となると、主役の萌衣が欠席するわけにはいかない。
 それもあって、萌衣は頑なに「欠席しない」という意思表示を高瀬にしていたのだ。


「……高瀬さん、今日は山見社長だけではないんですよね?」
「そうだな、前回会った時も『うちの若いもんも含めて』と言っていたし、実際、何人か連れて行くと事前に連絡があった」
「嬉しいです。なんだか賑やかな会になりそうですね」
「あぁ、そうだな」


 お店をくぐると、早速「高瀬くん、朝比奈さん!」と明るい声が飛んできた。山見が朗らかな笑顔でこちらに手を振っている。

 周りにいた男性陣も、こちらに会釈した。
 きっと、YAMAMIメーカーで働いている人たちなのだろう。

 萌衣と高瀬は促されるまま、長テーブルの中央に二人並んで腰を下ろした。
 まさに『本日の主役』といったところだ。
 テーブルの下は掘りごたつのようになっている。萌衣は改めて、店内の様子を見渡した。


(わぁ、お洒落なお店……山見社長、色んなお店を知ってるんだ)


 洒落ているが、高級過ぎない。
 若者でも入りやすいが、変な飲み方をする人はいなさそうだ。きっと、萌衣が喜びそうなお店を選んでくれたのだろう。
 
 YAMAMIメーカー側はどんな人が来ているのだろうと思い、目の前に座る人たちへ視線を向ける。すると、にこと微笑む男性と目が合った。


「YAMAMIの石倉です。朝比奈さん、よろしくお願いしますっ!」
「東雲商事の朝比奈です。このような機会をありがとうございます。本日はよろしくお願いします」


 威勢の良い挨拶をする石倉と、いつも通り丁寧に返す萌衣。
 その様子を見ていた山見は、「はっはっ」と声を出して笑った。


「朝比奈さん、うちのもんが威勢が良くてすみません。うちの工場は野郎ばっかりなんで、女性の接し方はあんまり分かってないんですよ。とにかく失礼がないよう言っておきましたが、先に謝っておきます」
< 54 / 134 >

この作品をシェア

pagetop