雨の日が苦手だった、私たちは

「いえ……! 元気なのは良いことだと思いますし、気持ちの良い挨拶です!」
「はは、朝比奈さんは心が広いですねぇ。なんでも受け止めてくれそうだ」


 そう言って豪快に笑う山見に対して、萌衣は「そんなことないですよ」と謙遜する。
 ふと、隣に座る高瀬からじっと視線を向けられることに気づいた。

 萌衣が視線を返そうとすれば、高瀬はふいっと目を逸らした。結局、何を言いたかったのか分からないまま、山見の音頭で飲み会は始まった。

 そして、乾杯をして前菜を食べ始めた時のことだ。


「……高瀬さんは、お酒じゃなくて良いんですか? この後、お仕事とか?」


 萌衣の向かいに座る石倉は、高瀬がオレンジジュースを持っているのを見て問いかける。
 特に深い意味はなく、ただ純粋に疑問に思ったのだろう。

 それに対して山見が「石倉くん、高瀬くんはねー……」と言いかけたが、遮ったのは高瀬だった。


「実は私、お酒が飲めないんですよ」
「あ、そうなんですね」
「えぇっ」


 石倉は特に驚いてもいないというのに、驚いたのは萌衣と山見だった。
 二人の反応に、石倉が驚いている。


「え、社長、どうしたんですか? 別に酒が飲めない人なんて、いくらでもいますよね」
「いやー高瀬くんがそれをあっさり明かすとは……あ、朝比奈さんは知ってました?」
「はい、あの、私も山見社長と同じことを思っていました……」


 首を傾げる石倉に、くすりと笑う高瀬。
 社内の飲み会では『お酒が飲めない』ことを隠していたというのに、どうしてこの場では明かしたのだろう? 初対面だからだろうか。

 
「すみません、石倉さんは何のことだかさっぱり分からないですよね。会社ではお酒が飲めないことを隠していて、朝比奈しか知らないんですよ」

「なるほど、そういうことだったんですね」

「代わりに甘党なので、それもまた『イメージと違う』とか言われたら面倒だなと」

「やっぱり、モテる人は大変ですね〜だって、男の俺から見ても、高瀬さんめちゃくちゃ格好良いですもん」
< 55 / 134 >

この作品をシェア

pagetop