雨の日が苦手だった、私たちは
「いえ……! 元気なのは良いことだと思いますし、気持ちの良い挨拶です!」
「はは、朝比奈さんは心が広いですねぇ。なんでも受け止めてくれそうだ」
そう言って豪快に笑う山見に対して、萌衣は「そんなことないですよ」と謙遜する。
ふと、隣に座る高瀬からじっと視線を向けられることに気づいた。
萌衣が視線を返そうとすれば、高瀬はふいっと目を逸らした。結局、何を言いたかったのか分からないまま、山見の音頭で飲み会は始まった。
そして、乾杯をして前菜を食べ始めた時のことだ。
「……高瀬さんは、お酒じゃなくて良いんですか? この後、お仕事とか?」
萌衣の向かいに座る石倉は、高瀬がオレンジジュースを持っているのを見て問いかける。
特に深い意味はなく、ただ純粋に疑問に思ったのだろう。
それに対して山見が「石倉くん、高瀬くんはねー……」と言いかけたが、遮ったのは高瀬だった。
「実は私、お酒が飲めないんですよ」
「あ、そうなんですね」
「えぇっ」
石倉は特に驚いてもいないというのに、驚いたのは萌衣と山見だった。
二人の反応に、石倉が驚いている。
「え、社長、どうしたんですか? 別に酒が飲めない人なんて、いくらでもいますよね」
「いやー高瀬くんがそれをあっさり明かすとは……あ、朝比奈さんは知ってました?」
「はい、あの、私も山見社長と同じことを思っていました……」
首を傾げる石倉に、くすりと笑う高瀬。
社内の飲み会では『お酒が飲めない』ことを隠していたというのに、どうしてこの場では明かしたのだろう? 初対面だからだろうか。
「すみません、石倉さんは何のことだかさっぱり分からないですよね。会社ではお酒が飲めないことを隠していて、朝比奈しか知らないんですよ」
「なるほど、そういうことだったんですね」
「代わりに甘党なので、それもまた『イメージと違う』とか言われたら面倒だなと」
「やっぱり、モテる人は大変ですね〜だって、男の俺から見ても、高瀬さんめちゃくちゃ格好良いですもん」