雨の日が苦手だった、私たちは

 高瀬は「いやいや」と謙遜し、石倉は「いや、本当に!」と力強く反論している。
 どうして今秘密を明かしたのか、萌衣は気になって仕方がない。つい、高瀬に答えを促してしまった。


「高瀬さん、どうして急に言おうと思ったんですか?」
「……なんとなく?」
「え、良いんですか?」
「なんでだろうな。まぁ、飲めないことを理由に、お客さんに距離を置かれることも無いだろうし」
「そう……なんですね」


 高瀬らしくない言葉に驚いていると、石倉の隣にいた山見は何やら嬉しそうな顔で「へぇ〜」と言った。皆の視線が、高瀬から山見に移る。


「いや〜高瀬くん、変わったねぇ〜」
「……そうでしょうか?」
「うん、あの高瀬くんがねぇ。『なんとなく』なんて、今までの高瀬くんなら絶対に言わないでしょう。まぁ……そういうことも、開示しても良いと思えたってことかな。ね、朝比奈さん?」
「はい……?」


 突然話をふられ、萌衣は「そう、ですね?」とぎこちない返しをしてしまう。高瀬が普段秘密にしていることを明かしても良いと思えた理由は、萌衣にはよく分からない。
 萌衣の戸惑いを察したのか、石倉が空気を変えるように高瀬に問いかけた。


「高瀬さん、甘党とおっしゃってましたけど、どこかおすすめのお店はありますか? 俺も割と甘いものが好きなので、気になります!」
「そうですね……あ、この前、朝比奈と行ったブックカフェがあって。そこのパフェがすごく美味しかったです」
「へぇ、朝比奈さんと一緒に行かれたんですか?」


 まさか、そこまで話すとは思わず、萌衣は目を白黒させてしまう。苦し紛れに、「あの、たまたまで……」と声を絞り出した。
 高瀬はというと、安定の営業スマイルだ。


 いつもの高瀬であれば、こんな突拍子もないことは言わない。(といっても、彼女がいるという嘘に続いて二回目だけれど)

 信頼している山見の前だからか、飲み会という席で場を盛り上げるために自己開示しているのか……。
 その後も、高瀬の饒舌ぶりは止まらなかった。
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