雨の日が苦手だった、私たちは
 飲み会が終わり、皆に別れを告げて、萌衣と高瀬は駅の方向へと歩き始める。
 少し歩き出したところで、高瀬が「あ、」と何かを思い出したように声を出した。


「朝比奈、悪い。山見社長に伝え忘れたことがあるから、少しここで待っててくれるか?」
「はい、もし時間がかかりそうなら先に帰りましょうか?」
「いや、夜道は危ないし、ちゃんと送る。とはいえ、ここであまり待たせたくないんだが……すぐ戻るから、少しだけ待ってて」


 そう言って、高瀬は走り出した。そんなに急がなくてもいいのに。
 この辺りは人通りも多いし、危ないことなんて起きる気がしない。道の端に寄り、スマホを見ながら高瀬が戻ってくるのを待っていた。


「お姉さん、ひとり?」
「え?」


 顔を上げると、いかにも酔っ払った男性二人組がこちらを覗き込んでいた。
 誰に話しかけているんだろう、と周りを見渡しても、自分しかいない。その様子を見た金髪の男性が「ハハッ」と笑った。


「ここにはお姉さんしかいないでしょ。こんな所で一人で何してるの? 俺たちと一緒に飲み直さない?」
「えっと、今、人を待っているので……」
「人? えーどこにもいないじゃん。それ断るための口実でしょ? というか、もしそれが本当なら、こんな所で一人で待たせるなんて酷いねぇ」


 どう返せばいいのか、分からない。
 萌衣の手首が掴まれた瞬間、息を切らした高瀬が走ってきた。


「朝比奈っ!」


 突然の声に、萌衣は目を丸くする。
 ぎゅっと掴まれた手首の不快感も、一瞬で飛んでいってしまった。
 金髪の男との間に割り入るように、高瀬がその男の手首を掴んだ。


「いててて……いってーな、力強すぎだろ!?」
「彼女は俺と待ち合わせしてるので」
「んだよ……ったく、酔いも冷めるわ。おい、いこーぜ」


 そう言って、男性二人組はあっという間にいなくなってしまった。

 萌衣の心臓は、ドクドクとうるさく脈打っていて止まらない。高瀬に顔を覗き込まれ「大丈夫か?」と言われた時には、ドクンと一際大きく飛び跳ねた。
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