雨の日が苦手だった、私たちは
「……急に悪い。朝比奈が絡まれてるのを見たら、先に体が動いてた。連れがいるって分かれば、引くと思って」
「な、なるほど……本当にありがとうございました、咄嗟のことに声も出なくて」
自分でも驚くほど落ち着かない気持ちを抱えたまま、突然、萌衣は脈絡もないことを言い出した。
「私……焦る高瀬さんを初めて見ました」
「え?」
「しかも、今日は二回も見ちゃいました。私が立ちくらみをした時と、今と……」
「……確かに、どっちも本当に焦ったな」
高瀬は今日一日の出来事を思い返しているのか、遠くの方に視線を向けてから再び萌衣を見た。
萌衣はただ「初めて見た」と言いたくなっただけで、それ以上に何か言いたいことがあるわけではない。
また『新しい高瀬』を知って驚いた。ただそれだけを伝えたくなってしまった。
「……なんか、朝比奈には『いろんな俺』を見つけられてる気がするな」
「そうですか?」
「あぁ、俺って滅多に慌てたりしないんだよ。割と何が起きても動じないタイプ。いつもは、な」
「なるほど。それじゃあ私は、“レアな高瀬さん”を見つけたわけですね」
「はは、レアな俺って」
隣に立つ高瀬は、くすくすと笑っている。
雨が降っていても、降っていなくても、高瀬と過ごす時間は心地良い。
そんな時間ができるだけ長く、続くと良いなと萌衣は思った——。
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