雨の日が苦手だった、私たちは
とある噂
ある日、高瀬が外回りで昼は不在だった。
萌衣は一人でご飯を食べようと、昼休憩が始まると同時に席を立つ。
たまたま執務エリアを歩いていた安藤に呼び止められ、「ご飯、一緒にどう?」と声をかけられた。萌衣は安藤、柳、石原の四人で久しぶりにランチをすることになった。
「いやー、なんか久しぶりっすねー。朝比奈さんのウェルカムランチ以来じゃないですか?」
「うんうん、そうなのよ。それで! 最近カフェテリアで噂の朝比奈ちゃんに、根掘り葉掘り聞かないとね〜」
「安藤さん、悪い顔してますよ」
柳に突っ込まれた安藤は、相変わらずにんまりと笑顔を見せている。噂の真相を聞きたくて、うずうずしているらしい。
萌衣は一体何が噂になっているのか分からず、首を傾げた。
「噂って、なんのことですか?」
「えー朝比奈ちゃん、よく高瀬くんとランチしてるんでしょ? もう、それだけで注目の的よ〜。しかも、高瀬くんは実は彼女がいるって噂じゃない! 朝比奈ちゃん、高瀬くんの彼女の話とか聞いたりしてないの?」
「え、えぇっと……」
「安藤さん、朝比奈さん困ってますよ。ほどほどにお願いします」
「そうですよー安藤さん。朝比奈さんだって、そんなに何でも喋れるわけじゃないんですし」
安藤は少し乗り出していた体を戻し、「あは、ごめんごめん〜」と言って手を合わせた。安藤を制した柳と石原は、呆れたように笑ってから、ご飯を食べ始めた。
「いや、高瀬くんを狙ってるとか、そういうのは一切なくて。なんていうか、野次馬的な? でも、あの高瀬くんがよくご飯を食べるようになったわよね。朝比奈ちゃん、彼に何か言ったの?」
「あ、はい……。営業から帰ってきた高瀬さんを捕まえて、ここに無理やり連れてきました」
「……えー! すごい、朝比奈ちゃん、結構思い切ったのね!」
「はい、そうじゃないと、いつか倒れてしまうんじゃないかって心配で。安藤さんも、『30超えたら本当に倒れるよ』とおっしゃっていましたし」