雨の日が苦手だった、私たちは
 それを聞いていた柳と安藤は深く頷き、石原も口を動かしながら頷いた。

 石原は確か24歳くらいのはずだ。
 女性陣二人の頷きにどれほど共感しているのか、萌衣には分からない。

 石原は口に入っていたご飯をごくりと飲み込んでから、萌衣に明るく言った。


「だとしても、朝比奈さんが高瀬さんを連れ出したのはすごいですよ〜! 俺も前に誘いましたけど、『この後商談があるから』って言って断られましたし。まぁ、タイミングが悪かったのもあると思うんですけど。
 それにしても、高瀬さんは朝比奈さんのことを信頼しているんですね〜」
「本当ね〜朝比奈ちゃんだものね。見るからに、優しさと慈愛の塊じゃない?」
「安藤さん、そのまとめ方はちょっと雑じゃないですか」


 柳の切れ味の良さに、萌衣はくすくすと笑ってしまう。「優しさと慈愛の塊」というのは初めて言われた。きっと、安藤は褒めてくれているのだろう。

 でも、その「優しさと慈愛の塊」のおかげで高瀬が信頼してくれているとは、もちろん思っていない。


「えー柳ちゃん、厳しいじゃな〜い。でも、朝比奈ちゃんは無理してない? あの高瀬くんを『優しい』って言うくらいだから、嫌な思いをしても気付いてないんじゃないかって心配で」
「安藤さん、ありがとうございます。でも、特に無理していないですよ? 嫌な思いもしていないですし」
「そう? それなら良かった〜」


 嬉しそうな顔をする安藤に、柳はわずかに口元を緩めた。石原もにっこり笑っている。
 そしてそんな三人に、以前よりも心を許している萌衣。

 四人の和やかなランチタイムは、ある人の登場で一瞬にして崩れてしまった。


「あれー朝比奈さん、お疲れ様〜」
「西さん……! お疲れ様です!」


 慌てて会釈をし、西の顔を見る。
 今日はなんだか機嫌が悪そうだ。あまり長く話していると、地雷を踏んでしまいそうで怖い。

 様子を伺っていると、西はまだその場を離れなかった。


「あの〜みなさん、“あの噂”って聞きましたか?」
「え、何を?」
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