雨の日が苦手だった、私たちは
「いえ、本当に聞いてないです……」
「そっかー。あとで、高瀬くんに直接聞いてみようかな〜」
その後、萌衣はご飯を食べても味がしなかった。
久しぶりに四人でご飯を食べることができて、とても嬉しかったのに。
営業部に戻る途中、萌衣はまた眩暈に襲われて体勢を崩してしまった。それをすかさず抱き止めたのは、石原だった。
「朝比奈さん! 大丈夫ですか!?」
「あ、ごめんなさい……ちょっと眩暈がしてしまって、大丈夫です」
「いや、どこかで休んだ方が……」
「えー朝比奈ちゃん、大丈夫? 貧血?」
前を歩いていた安藤と柳も、様子を伺っている。
石原の腕から離れ、萌衣は笑顔を作った。大したことはないと、ちゃんと伝わるように。
「貧血みたいです。すみません、お騒がせしました。もう大丈夫ですので、戻りましょう」
「……朝比奈さん、本当に無理しないでくださいね?」
柳がこちらを覗き込む。その優しさに、萌衣は笑顔で返した。
萌衣の言う『大丈夫』にまだ納得していない様子の石原は、柳の言葉に同調するように頷いた。
「そうですよ。無理せず、今日は早めに帰宅した方がいいです。高瀬さんだって、分かってくれると思います。多分」
「石原くん、なんで最後が尻すぼみなのよ〜。まぁ、言いたいことは分かるけどさ」
石原の「多分」という言葉に、萌衣は苦笑いする。
果たして“仕事人間の高瀬”が周りの体調に気を遣うのか、石原は自信がないらしい。
でも、萌衣は思い出していた。先日、立ちくらみで倒れそうになった時、高瀬がすかさず手を差し出してくれたことを。
「……高瀬さんは、『体調が悪い』って言ったら気を遣ってくれると思います。なので、これくらいのことなら言いません」
「そっか……うん、とにかく無理だけはしないようにね?」
「はい。みなさん、ありがとうございます」
その後は四人で執務室に戻り、萌衣もいつも通り仕事に取り掛かった——。
***
——カタカタ、カタカタ
「朝比奈、こっちの資料修正も頼んで良いか? 修正箇所、さっきメールで送っておいたから」