雨の日が苦手だった、私たちは
温和な笑顔だというのに、瞳の奥の鋭さは消えない。
——冗談ではないと、分かる。
サエも事前に東雲と話した上でここに来ているのだろう。きっと、酒が飲めないことだって知っていたはずだ。
この時ふと、深く考えずにある言葉を漏らしていた。
「サエさんは……好きな人と結婚なさらなくて良いのですか?」
「え?」
「あ、すみません。突然知らない人間とお見合いだなんて、驚かれただろうなと思いまして」
「あぁ、そういうことですね。私、高瀬さんが『好きな人と結婚』とおっしゃるなんて、意外だなと思って驚いてしまいました」
そう言われてみると、らしくない。
今までだったら、こんなことは言わない。
“らしくない”ことをするようになったのは、朝比奈と一緒にいるようになってからだ。一瞬、彼女の顔が頭をよぎった。
目の前の会話に集中しなければと、朝比奈のことを頭の隅に移動させる。
自分の発言に指摘してくるサエにも、『この短時間でよく分かったな』と驚いた。まぁ、既に色々と調べていたのかもしれないが。
「高瀬さんって、感情よりもいかに合理的に、効率よく物事を進められるかを重視されているのかなと思いまして。でも、それは私も同じ考えですよ。だって、感情的になっても良いことはありませんもの」
「……それは、おっしゃる通りですね」
「ですから、もし高瀬さんが東雲商事で上を目指すなら、私を利用していただいて構わないと思っています」
「なぜでしょうか。サエさんにとってメリットはありますか?」
サエは日本酒を口に含み、「そうですね」と少し考えるような素振りを見せた。
「東雲家の看板を背負う覚悟はありますが、私は社長の器ではありません。そうなると、いずれ誰かしらと結婚しなければなりません。感情に振り回されるような結婚よりも、お互いに利害が一致している方が安心できます。無駄な駆け引きも必要ありませんよね?」
「それで、その相手に私が良いと……?」
——冗談ではないと、分かる。
サエも事前に東雲と話した上でここに来ているのだろう。きっと、酒が飲めないことだって知っていたはずだ。
この時ふと、深く考えずにある言葉を漏らしていた。
「サエさんは……好きな人と結婚なさらなくて良いのですか?」
「え?」
「あ、すみません。突然知らない人間とお見合いだなんて、驚かれただろうなと思いまして」
「あぁ、そういうことですね。私、高瀬さんが『好きな人と結婚』とおっしゃるなんて、意外だなと思って驚いてしまいました」
そう言われてみると、らしくない。
今までだったら、こんなことは言わない。
“らしくない”ことをするようになったのは、朝比奈と一緒にいるようになってからだ。一瞬、彼女の顔が頭をよぎった。
目の前の会話に集中しなければと、朝比奈のことを頭の隅に移動させる。
自分の発言に指摘してくるサエにも、『この短時間でよく分かったな』と驚いた。まぁ、既に色々と調べていたのかもしれないが。
「高瀬さんって、感情よりもいかに合理的に、効率よく物事を進められるかを重視されているのかなと思いまして。でも、それは私も同じ考えですよ。だって、感情的になっても良いことはありませんもの」
「……それは、おっしゃる通りですね」
「ですから、もし高瀬さんが東雲商事で上を目指すなら、私を利用していただいて構わないと思っています」
「なぜでしょうか。サエさんにとってメリットはありますか?」
サエは日本酒を口に含み、「そうですね」と少し考えるような素振りを見せた。
「東雲家の看板を背負う覚悟はありますが、私は社長の器ではありません。そうなると、いずれ誰かしらと結婚しなければなりません。感情に振り回されるような結婚よりも、お互いに利害が一致している方が安心できます。無駄な駆け引きも必要ありませんよね?」
「それで、その相手に私が良いと……?」