雨の日が苦手だった、私たちは
「はい。高瀬さんは感情を切り離して物事を判断できる方でしょう? 冷静で、スマートだと思います」
「そういうことだったんですね」
東雲だけでなく、娘のサエも自分と似ている所がある。
以前の高瀬であれば、『女性から言い寄られることもなくなるし、出世を目指すなら確実なルートだ』と判断して、受けていただろう。自分にとってデメリットがない。
でも、今は何かが引っ掛かる。
理由の分からない違和感なんて、扱いづらいからすぐに切り捨てていたのに。——今までであれば。
「……一度、お時間をいただいても宜しいでしょうか?」
「あぁ、もちろんだよ。そのために、お見合いはまた改めてと言ったのだから。まぁ、私は娘のサエだけでなく、君にも幸せになってほしいと思っているのだから。一度よく考えて、必要であればもう少し仲を深めてからでも構わない」
東雲はうんうんと頷いている。
それを聞いて、高瀬は内心驚いた。東雲のことだから、無理矢理にでも進めるかと思っていたのだ。でも、どうやらそれは違うらしい。
「……なぜ、私が幸せになることも考えて下さるんですか?」
「うーん、そうだねぇ。昔の私に似ているから、かな?」
「昔の社長に似ているんですか……?」
「あぁ」
高瀬が首を傾げると、東雲は笑いながら目を細めてこちらを見た。
まるで高瀬を通して、昔の自分を見ているようだった。懐かしむような視線に、積み重ねてきた年月の違いを感じた。
「……高瀬くんは、感情的な人間は苦手かい?」
「はい……子供の頃から苦手ですね。そういう人とは自然と距離をとるようになりました。今では、随分うまく付き合えるようになったと思いますが」
「なるほど、そうだったのか。……あぁ、サエ。この日本酒を追加で頼んでくれないか?」
「はい、お父様」
そして、東雲は何事もなかったかのように仕事の話をし始めた。