雨の日が苦手だった、私たちは
 そう言い切るのだから、あとは自己責任だ。
 朝比奈の意思に任せることにし、パソコン画面に向き直った。

 終業時間も近づいてきた頃、手分けしてすべてのタスクを終わらせた。朝比奈に間違いを指摘すると、ミスは格段に減った。

 去り際、彼女は視線を背けるようにして、急いで出て行ってしまった。


(この前、会議の後にふらついてたし……やっぱり、体調が悪いのはまだ治ってないのか?)


 朝比奈の後ろ姿を見ながら、ふと、会議室での出来事を思い出す。たまたま近くを歩いていた石原が、「あれ?」と声を上げた。


「高瀬さん、朝比奈さんって今帰ったんですか?」
「あぁ。それがどうした?」
「今日、お昼に目眩でふらついてたので、『無理しないでくださいね』ってみんなで言ったんですけど。早退せず定時まで仕事したんですね」
「……昼から?」


(やっぱり、ずっと体調が悪かったのか。石原たちと昼を食べた時点でふらついていたなら……どうして、もっと早く俺に言わなかったんだ?
 ――いや、どうして俺は、もっと早く気づけなかったんだ?)


 そこまで思い出し、目の前の駅ビルを見上げる。
 考え事をしていたら、あっという間に着いてしまった。結局、お見合いのことは頭からすっかり抜けて、朝比奈とのやりとりだけが頭の中を占めていた。

 
(明日、朝比奈に会ったら、ちゃんと体調を気遣う言葉をかけよう)
 

 そう思っていたのに。
 次の日、朝比奈は出社してこなかった——。


***
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