雨の日が苦手だった、私たちは
(……やっぱり、今日一日お休みをもらおう。まだ早すぎるし、もう少ししたら連絡しないと)
スマホのアラームを7時半にセットして、もう一度ベッドに潜り込む。再び瞼を閉じた。
少し寝ると、体調は随分回復してきたような気がした。
萌衣は時間を確認してから、スマホで社内チャット画面を開き、田中と高瀬宛に休む旨を伝えた。
まだ仕事は始まっていないはずなのに、すぐに返事がきた。高瀬からだ。
『了解、ちゃんと休んで。こっちのことは何も気にしなくて良いから。(返事は不要)』
高瀬からの『返事は不要』の追記を見て、萌衣はふふっと頬が緩む。
きっと、高瀬なりの気遣いなのだろう。やっぱり彼は優しい人だと、萌衣は改めて思う。
確かに『周りを優先してばかりだったかもしれない』と萌衣も気づき始めたけれど、周りを観察していたからこそ、こうした小さな『優しさ』に気づけるのは幸せなことだと思う。
これまで、学校も仕事もほとんど休んだことがなかった萌衣は、初めて風邪と微熱で休んだ。
しっかり睡眠を取って、徐々に『もう大丈夫』と思えるくらいに良くなってきた。
お昼も近づき、お腹も空き始めた頃、社内チャットで高瀬から連絡がきた。突然の連絡に、ほんの少し緊張が走る。
(高瀬さん、どうしたんだろう……。まさか、また資料に不備があった? それとも……お弁当が無くて困ってるとか?)
高瀬がそんなことをわざわざ連絡するとは思わないけれど、萌衣は不思議に思いながらチャット画面を開いた。
すると、萌衣の全く想像しなかった文章が並んでいた。
『ご飯、ちゃんと食べられてるか? 何か必要なものがあれば言ってくれ』
驚いた萌衣は、その文章を何度も読み直していた。見間違いかと思ってしまった。
『言ってくれ』ということは、高瀬はわざわざ『萌衣の自宅までご飯を持っていっても良い』と言っているようなものだ。
高瀬にとって、何もメリットがないじゃないか。