雨の日が苦手だった、私たちは
(あ、早く治ってくれた方が仕事が捗る……とか? それでも、高瀬さんがそこまでしてくれる必要はないのに……)
彼の気遣いに感謝しつつ、萌衣は早速返信を打った。
『高瀬さん、お気遣いありがとうございます。でも、随分体調も良くなりましたので、大丈夫です』
そう返すと、高瀬からは『そうか、良かった』とすぐさま返信があった。
萌衣はふふ、とまた口元が緩んでしまう。
「高瀬さん、自分の昼食の心配はしないのに、私の心配をしてくれるなんて。高瀬さんこそ、もっと自分を大事にしてほしいな……」
つい、そんな独り言が溢れてしまう。
妹の杏奈に『自分がどうしたいかを大事にしてね』と言われたばかりなのに、自分のこと以上に彼の幸せを願ってしまう。
高瀬のことを考えていると、ふと、お見合いの件が頭をよぎった。途端に、気持ちがすっと落ちていく。
(この気持ちに名前をつける前で良かった、なんて思ってたけど。結局、杏奈が言う通り、自分の気持ちを後回しにしてただけだった……)
目頭が熱くなるも、それが溢れないようきゅっと力を込めた。
多分、もうとっくに手遅れだった。
名前をつける前から、特別な感情は生まれていたんだ。
(自分がどうしたいかを大事にしたいけど……。でも、高瀬さんにとって、お見合いが良い方向に進む方が幸せなことだと思うから。
あれだけお仕事を頑張ってるんだから、ちゃんと報われてほしい。とにかく、当面はこの感情と向き合うしかない)
好きだと気づいてしまったけれど、相手はもうお見合いをする予定なのだ。
自分の『こうしたい』を押し付けたくはない。好きな人には、ちゃんと幸せになってほしいから。
(始まる前から失恋してるなんて……本当、今までも大事なものを見落としていたのかもしれない。今度からは、ちゃんと自分の気持ちを大事にしよう)
萌衣は冷蔵庫から材料を取り出し、悲しい気持ちを振り払うように無心で料理を始めた——。
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