雨の日が苦手だった、私たちは
そして、ただ寄りかかって寝ていただけではなく、なんと高瀬のジャケットもかけられていたと気づき、萌衣は慌ててそれを返した。
金沢駅に到着し、二人で駅を降りる。
降り立って最初に目に入ったのは、壮大なガラスの天井だった。「わぁ」とつい声が漏れてしまう。
天井は幾何学模様で覆われており、『まるでおしゃれな傘をさしているみたいだ』と思った。
「すごいですね……えーっと、これは『もてなしドーム』ですね」
「へぇ、すごいな」
「金沢は雪や雨が多いので、『駅を降りた人に傘を差し出すおもてなしの心』をコンセプトに生まれたそうです」
「なるほど……まるで、朝比奈みたいだな」
「え?」
高瀬の言葉の意味をすぐには理解しきれず、つい首を傾げてしまう。
「朝比奈は、困っている人を見捨てないだろ? というか、その人が困る前に先回りして、どうにかする。おもてなしの塊みたいじゃないか」
「おもてなしの塊って。そんなこと、初めて言われました。……あれ、少し前に安藤さんが『優しさと慈愛の塊』っておっしゃっていたような」
「安藤さん、そんなことを言ってたのか。みんな思うことは同じだな」
高瀬はくすりと小さく笑う。
萌衣は「いつも周りのことばかり考えていて、自分のことは後回し」と言われたばかりで、自分のしてきたことが間違いだったのかと、自信を失いかけていた。
でも、全部が全部、自分の気持ちがなかったわけではなくて。
だからこそ、高瀬に褒められたことで、じわじわと嬉しさが込み上げてきた。
「ありがとう、ございます」
「……それにしても、本当に雨が酷いな。晴れてたら、あそこの鼓門の前で写真を撮ってやれたのに」
「あの門、本当に壮大ですよね。能楽の鼓をイメージしてるとか」
「あぁ。でも、この土砂降りじゃ仕方ないな。早速、タクシーで移動するか」
東京の快晴がまるで嘘だったかのように、強い雨がドーム天井を激しく打ちつけていた。