雨の日が苦手だった、私たちは
高瀬は驚いたような顔をして、こちらを見た。
萌衣は明るく「せっかく金沢まで来ましたし、時間もありますから!」と言うと、高瀬も少し頬を緩めた。森川も「ぜひ!」と言って瞳に光が戻っていた。
——ウイーン、プシュッ、カチ、カチ……
工場に足を踏み入れると、いろいろな音が耳に飛び込んでくる。
森川に案内された場所でも、「ウイーン」というモーター音が、低く一定のリズムを刻んでいた。
三人並んで、無言でその機械の動作を見つめる。何度か、同じ動作を見届けた。
「……分かりますか?」
森川が問いかける。高瀬は、腕を組んだまま無言で機械を見つめていた。
足元に伝わる、微かな震え。回転音の中に、わずかに混ざる擦れるような音。
——キィ……
「確かに、揺れている感じがしますね。私でも感じるくらいですから、森川さんの違和感は少しどころではなかったんじゃないですか?」
「はい……とはいえ、数値は正常ですし」
「あの、」
萌衣が小さく声を出すと、二人の視線がこちらに集まった。
「シャフトを測定した時と、実際に使っている今とでは、条件は同じなのでしょうか? 例えば、温度とか……今日ってかなり湿度もありますよね。室内も蒸し暑いですし」
森川がはっとしたように視線を上げた。高瀬は手元の資料を確認している。
「このシャフトは、二十度基準ですね。こちらの工場は?」
「今日は……二十六度ありますね」
「恐らく、運転時はさらに上がりますよね。……条件を揃えて、再検証しましょう。こちら側でも、加工メーカーに再度確認してみます」
「……ありがとうございます!」
二人のやり取りを聞いて、萌衣はほっと胸を撫で下ろす。
専門的な知識があるわけではない。
ただ、とにかく前に進むよう、必死に思いついたことを口にしただけだ。それでも、高瀬は頬を緩めて萌衣を見た。
「朝比奈、ありがとうな」
その笑顔が、いつも会社で振りまいているものとは全く違って。萌衣の胸の奥がとくんと跳ねた。