雨の日が苦手だった、私たちは
萌衣は急いで、コンビニに向かった。
相変わらず外は土砂降りで、持ってきた折り畳み傘ではどうも心許ない。
それでも、昂った心を落ち着かせるには、一人になる時間が必要だった。何かしていないと、そわそわしてしまう。
(えーっと、下着とスキンケアと……あと、何かあるかな)
レジの近くに、金沢銘菓のきんつばが置いてあった。それを二つ手に取り、レジに持って行く。
(高瀬さん、喜んでくれるかな)
距離を取ろうと決めても、結局、高瀬が喜ぶことを考えてしまう。レジ袋を握りしめ、萌衣は再び大雨の中に飛び込んでいった——。
*
旅館に戻り、宿泊する部屋へと足を踏み入れる。
そこには、ネクタイを外して少し気が緩んでいる高瀬がいた。そして、澄んだ双眸が萌衣を真っ直ぐとらえた。
「……朝比奈、びしょ濡れじゃないか。バスタオル持ってくるから。あ、もうお風呂に行ってきたらどうだ? 雨で冷えただろう」
「すみません、タオルもありがとうございます」
タオルを受け取り、水滴を拭き取る。
荷物を置いて、早速、大浴場に行くことにした。
その間も、高瀬はもう一仕事するらしい。今日やっと大型の契約がまとまったというのに、彼はもう次のことを考えているのだ。
人もまばらの大浴場で、萌衣は温泉に浸かりながらぼうっと波紋を眺めていた。
(高瀬さん、ずっと気遣ってくれてる。今日は私も、少しは役に立てたかな……)
ちゃぷ、と小さな音が耳に届く。
コンビニに行った時と同じで、結局、頭に浮かぶのは高瀬のことばかりだった。
なんとかこの気持ちに折り合いをつけようと決めたのに、何度も彼の優しさに触れて、思いは募っていく一方だ。
(……よし、決めた)
高瀬と過ごす時間はまだまだある。
だから、お見合いの話がどうなっているのか、それとなく聞いて。
良い方向に進んでいるのであれば、ちゃんと線を引こう。本当は、あまりお見合いの話も聞きたくないけれど……。
『自分がどうしたいかを大事にしてね』
ふと、杏奈の言葉が頭を掠める。
聞きたくない。でも、前に進みたい。
相変わらず外は土砂降りで、持ってきた折り畳み傘ではどうも心許ない。
それでも、昂った心を落ち着かせるには、一人になる時間が必要だった。何かしていないと、そわそわしてしまう。
(えーっと、下着とスキンケアと……あと、何かあるかな)
レジの近くに、金沢銘菓のきんつばが置いてあった。それを二つ手に取り、レジに持って行く。
(高瀬さん、喜んでくれるかな)
距離を取ろうと決めても、結局、高瀬が喜ぶことを考えてしまう。レジ袋を握りしめ、萌衣は再び大雨の中に飛び込んでいった——。
*
旅館に戻り、宿泊する部屋へと足を踏み入れる。
そこには、ネクタイを外して少し気が緩んでいる高瀬がいた。そして、澄んだ双眸が萌衣を真っ直ぐとらえた。
「……朝比奈、びしょ濡れじゃないか。バスタオル持ってくるから。あ、もうお風呂に行ってきたらどうだ? 雨で冷えただろう」
「すみません、タオルもありがとうございます」
タオルを受け取り、水滴を拭き取る。
荷物を置いて、早速、大浴場に行くことにした。
その間も、高瀬はもう一仕事するらしい。今日やっと大型の契約がまとまったというのに、彼はもう次のことを考えているのだ。
人もまばらの大浴場で、萌衣は温泉に浸かりながらぼうっと波紋を眺めていた。
(高瀬さん、ずっと気遣ってくれてる。今日は私も、少しは役に立てたかな……)
ちゃぷ、と小さな音が耳に届く。
コンビニに行った時と同じで、結局、頭に浮かぶのは高瀬のことばかりだった。
なんとかこの気持ちに折り合いをつけようと決めたのに、何度も彼の優しさに触れて、思いは募っていく一方だ。
(……よし、決めた)
高瀬と過ごす時間はまだまだある。
だから、お見合いの話がどうなっているのか、それとなく聞いて。
良い方向に進んでいるのであれば、ちゃんと線を引こう。本当は、あまりお見合いの話も聞きたくないけれど……。
『自分がどうしたいかを大事にしてね』
ふと、杏奈の言葉が頭を掠める。
聞きたくない。でも、前に進みたい。