雨の日が苦手だった、私たちは
高瀬は再び、ご飯に箸を伸ばす。
あっという間に平らげた二人は、仲居さんに布団を用意してもらった。よく見ると、なぜか布団がぴたりとくっついている。
「あのー……高瀬さん?」
「どうした? 俺はもう寝るけど、朝比奈は好きに過ごしてくれて良いから」
「あ、いえ……私も、もう寝ます」
「じゃあ、電気を消すか」
「私が消しますね」
支度を済ませて布団のところへ行くと、高瀬はもう布団に入って目を閉じていた。
萌衣はパチン、と照明を落とす。
暗い部屋の中、彼は萌衣の布団に背中を向けるようにして横になっている。聞こえるのは雨の音だけで、この部屋の静けさが余計に際立つ。
「高瀬さん、おやすみなさい」
小さく、囁くように声をかける。
もう寝ているかと思ったけれど、返事があった。
「あぁ、おやすみ」
萌衣も布団に潜り込み、高瀬に背を向けて横になった。
カーテンの隙間から、雨垂れがぽたぽたと落ちているのが見える。雨は弱まっているのか、先ほどのような激しさはなかった。
ちゃんと寝ようと、きゅっと目を閉じた。
——でも、うまく寝付けない。
(……高瀬さん、どうしちゃったんだろう)
夕食の間、ずっと上の空だった。
「うまく言葉にできない」と言う高瀬に、いつもとは違う、感情的な彼に触れたような気がした。
(いつから様子がおかしくなったんだろう。お見合いの話をした時? あ、お弁当をやめるって言った後から——?)
まさか、と思う。
でも、様子がおかしくなったのはお弁当の話をしてからだった。
(突き放すようなことを言って、傷つけちゃったかな……でも、ちゃんと距離を取らないと、自分が傷つくだけだから……自分の気持ちも大事にするって決めたから)
目を閉じて思考を巡らせていると、後ろから微かな衣擦れの音がした。
高瀬が寝返りを打ったのだと、萌衣は背中越しに感じた。すぐ近くに、高瀬がいる。
その存在を意識するだけで、萌衣の心音はとくとくと早くなっていった。