雨の日が苦手だった、私たちは
 ふう、と小さくため息をつくと、たまたま後ろを通りかかった部長から声をかけられた。


「朝比奈さん、最近どう? うちの部署にも慣れてきた?」
「……部長! はい、随分慣れてきました。高瀬さんもフォローしてくださって」
「そうか、それは良かった。それじゃあ、そろそろ他の営業担当のサポートもお願いできるか?
 異動初日に『三人のサポートをお願いしたい』って言っていたと思うんだが」
「あ……そう、ですよね」


 その言葉に、高瀬がぴくりと反応したように見えた。思い違いかもしれない。


「他二人は、営業一年目の若井と、ベテランの牛山さんだ。牛山さんは全部自分でできるが、若井の方は色々とまだ手がかかるかもしれない。まぁ、うちの稼ぎ頭である高瀬のサポートができるんだから、問題無いだろう」
「……はい、頑張ります」
「高瀬。早速だけど、朝比奈さんを連れていってもいいか?」
「はい、こちらは大丈夫です」


 萌衣は部長について行こうと立ち上がる。
 ちらと後ろを振り返るも、高瀬の視線はパソコン画面に向いていた。

 やっぱり、彼は自分には少しも関心がないのかもしれない。今までは、仕事でペアだったから関心があるように見えていただけで。
 そう思うと、胸がツキンと痛んだ。


「朝比奈さん?」
「あ、はい……!」
「おーい、若井〜。今日から朝比奈さんがサポートに入るから、しっかり頑張れよ〜」
「はいっ! 朝比奈さん、よろしくお願いします!」


 勢いよくお辞儀をする若井を見て、ふふと笑みが溢れそうになる。突然笑っては失礼だろうからと、萌衣はきゅっと口角を上げて誤魔化した。

 
(若井くん、ピチピチの新人って感じがして、初々しいなぁ)

「……朝比奈です。よろしくお願いします!」


 にこりと微笑むと、若井も笑顔になる。穏やかな空気になり、部長も「大丈夫そうだな」と言って去っていった。
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