雨の日が苦手だった、私たちは
それから、萌衣は高瀬の隣であることは変わらないものの、萌衣の左隣に若井が移ってきた。高瀬と若井の間に挟まる形で、業務をすることになった。
「朝比奈さん、すみません、ここちょっと分からなくて……」
「うん? あ、これは去年のデータを見ればよくて」
新人・若井から質問を受けることも多く、以前より、高瀬と話す時間がぐっと減っていた。でも、萌衣は「ちょうど良かった」とも思っていた。
相変わらず、高瀬とのギクシャクは続いており——
「朝比奈」
「はい、どうされましたか?」
「この資料作成、手伝ってもらってもいい?」
「はい、どちらの資料でしょうか」
二人で一緒に画面を覗き込む。
何度か意見を交換したものの、一度も目が合わなかった。
目を合わせないよう、意識的に視線を逸らしている気がした。
「……高瀬さん」
「ん、どうした?」
「……何でもないです。あ、今からコーヒーを淹れようと思うんですけど、高瀬さんも飲みますか?」
「あぁ、せっかくだからもらおうかな」
くるりと椅子を回して、萌衣は若井にも声をかけた。
「若井くん、コーヒー飲む?」
「え、良いんですか? 嬉しいです! あ、でも俺苦いのは飲めなくて……」
「ふふ、そうなんだ。じゃあ紅茶のパックがあったと思うから、それでも良い?」
「はいっ、ありがとうございます! 俺、コーヒーが苦手ってお子様ですよね。甘党なんで、カフェ行ってもカフェモカとか頼んじゃうんですけど」
「そっか、高瀬さんは——……」
甘党だけど、コーヒーはブラックですよね——そう言いかけて、口をつぐむ。
その話をここでバラして良いのか、瞬時に判断できなかった。話題に上げられた高瀬は、「?」と首を傾げている。
「なんでもないです! すみません、じゃあ飲み物持ってきますね」
そう言って、萌衣は急いで給湯室に向かった。
今までずっと目が合わなかった高瀬から、なんとなく、背中に視線を向けられているような気がした——。
***
「朝比奈さん、すみません、ここちょっと分からなくて……」
「うん? あ、これは去年のデータを見ればよくて」
新人・若井から質問を受けることも多く、以前より、高瀬と話す時間がぐっと減っていた。でも、萌衣は「ちょうど良かった」とも思っていた。
相変わらず、高瀬とのギクシャクは続いており——
「朝比奈」
「はい、どうされましたか?」
「この資料作成、手伝ってもらってもいい?」
「はい、どちらの資料でしょうか」
二人で一緒に画面を覗き込む。
何度か意見を交換したものの、一度も目が合わなかった。
目を合わせないよう、意識的に視線を逸らしている気がした。
「……高瀬さん」
「ん、どうした?」
「……何でもないです。あ、今からコーヒーを淹れようと思うんですけど、高瀬さんも飲みますか?」
「あぁ、せっかくだからもらおうかな」
くるりと椅子を回して、萌衣は若井にも声をかけた。
「若井くん、コーヒー飲む?」
「え、良いんですか? 嬉しいです! あ、でも俺苦いのは飲めなくて……」
「ふふ、そうなんだ。じゃあ紅茶のパックがあったと思うから、それでも良い?」
「はいっ、ありがとうございます! 俺、コーヒーが苦手ってお子様ですよね。甘党なんで、カフェ行ってもカフェモカとか頼んじゃうんですけど」
「そっか、高瀬さんは——……」
甘党だけど、コーヒーはブラックですよね——そう言いかけて、口をつぐむ。
その話をここでバラして良いのか、瞬時に判断できなかった。話題に上げられた高瀬は、「?」と首を傾げている。
「なんでもないです! すみません、じゃあ飲み物持ってきますね」
そう言って、萌衣は急いで給湯室に向かった。
今までずっと目が合わなかった高瀬から、なんとなく、背中に視線を向けられているような気がした——。
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