喫茶店の常連客に求婚されました!【店ごと買い取るってどういう事ですか?】
ピンチ?
「この喫茶店ごと君を買い取らせて下さい!」
「か、か、買い取るって…悠乃(ゆの)は物件じゃありません!!」
「す、すみません!」
と男性は頭を下げた。
しまった、いつも笑顔の君を怒らせてしまった……
東京の高級住宅地にある平屋を喫茶店として営業している『夢乃(ゆめの)』
いつもスーツ姿で店に来る常連客の立木克哉(たちぎかつや)は90度の角度の謝罪をしていた。
12月初旬の平日の夕方の事だった。
『夢乃』は朝8時から17時まで営業している喫茶店だ。
住宅地ということもあり、夜は営業はしていないがお陰様で朝からたくさんの常連客様が来てくれている。
お店にはマスターと小川悠乃(おがわゆの)の2人でマスターは悠乃の伯父さんにあたる。
土日には伯母さんもお店を手伝っているいわゆる家族経営の喫茶店だ。
悠乃は大学からバイトで手伝い、卒業してそのまま店の従業員として働いている。
定休日は水曜日でモーニングの時間は8時から10時まで。
モーニングは洋食と和食が選べて700円
近所の人達が結構来てくれて繁盛している。
ランチは洋食がほとんどで1500円程
元々この『夢乃』は悠乃の両親が始めた喫茶店だった。
ところが悠乃が中学生の時に事故で両親を亡くし、伯父さんの家に引き取られた。
伯父さんは仕事を辞めてこの『夢乃』を続ける事を決めて現在にいたっている。
閉店近くの夕方、店内にはスーツ姿の常連客が1人カツカレーを食べていた所に店のドアが開いて、1人の男性が入って来たのだ。
「大野と言います、実は親父が先日亡くなりまして、この家は僕の名義になりました」
「えっ、大野さんが亡くなった…」
「はい、早速ですがこの家を売りに出したいと思っています」
「え…そんな」
「もちろん1週間後に出ていけとは言いません、法律上の手続きとかもありますから…ただ今日はそういう方向でいくと伝えに来ただけです、それでは失礼します」
その大野という男性は店から出ていった。