祝福のあとで
ひかりは、
 足を止めて、
 直を見る。

「……ちゃんと、
 これからの話したいです」

 直は、
 少しだけ間を置いてから頷いた。

「うん」

 それだけで、
 十分だった。

 でも。

 直は、
 ひかりの前に立ったまま、
 小さく息を吐く。

「一年、待ってさ」

 声は低く、
 でも柔らかい。

「はっきり分かった」

 ひかりの目を見る。

「俺、
 ひかりがいない未来、
 一回も想像できなかった」

 言い切りだった。

 ひかりの胸が、
 静かに熱を持つ。

「……好きだよ」

 今さら隠さない声。

「ずっと」
 

「一緒に考えようって言ったけどさ」

 少しだけ、
 口元が緩む。

「もう、
 答えは出てる」

 ひかりの手に、
 そっと触れる。

 強くは握らない。
 でも、離さない。

「結婚しよう」

 お願いでも、
 勢いでもない。

 待った人の、
 確信だった。

 ひかりは、
 すぐには答えなかった。

 ただ、
 胸の奥に溜まっていたものが、
 ゆっくりほどけていく。

 ——奪われなかった未来。
 ——信じて待ってくれた時間。

 ひかりは、
 小さく息を吐いて笑う。

「……お待たせました」

 直は、
 ほんの少し照れたみたいに視線を逸らす。

「慣れてます」

 でも、
 すぐにひかりを見る。

「それに、
 待つの、嫌じゃなかった」

 その言葉で、
 全部伝わった。

 二人は、
 並んで歩き出す。

 急がない。
 でも、
 もう離れない。

 選ばれる前に終わらなかった恋は、
 ここから、
 ちゃんと続いていく。

今度は、
 同じ場所で。


end
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