祝福のあとで
空港へ向かう車内は、
驚くほど穏やかだった。
会話は多くない。
でも、沈黙が重くならない。
信号待ちのたびに、
直の指先が、ひかりの手に触れる。
離す気がない、という触れ方。
チェックインを終えて、
搭乗口の前まで来ると、
さすがに足が止まった。
「ここまででいい」
直が言う。
ひかりは頷いた。
行ってほしくない、とは言わない。
引き止める理由も、もうない。
直は一歩近づいて、
ひかりの前に立つ。
「ちゃんと帰るから」
「うん」
「ちゃんと待つから」
それも、言い切りだった。
次の瞬間。
直は、ひかりの顎にそっと手を添えて、
迷いなく口づけた。
短くて、静かなキス。
ひかりは一瞬、目を見開く。
「……ここ、空港」
小さく言うと、
直は少しだけ悪戯っぽく笑った。
「海外だから」
理由になっていないのに、
なぜか納得してしまう言い方。
直は、ひかりの額に軽く触れてから言う。
「一つだけ約束」
「なに?」
「寂しかったら、我慢しないで」
声が、少しだけ低くなる。
「電話して」
ひかりは、少し間を置いてから頷いた。
「……直もね」
「俺はする」
即答だった。
「多分、想像より早く」
ひかりが笑う。
「じゃあ」
一呼吸。
「次は、私が帰る番」
直の目が、少しだけ和らぐ。
「待ってる」
それだけで、十分だった。
搭乗の案内が流れる。
ひかりは一歩下がって、
最後にもう一度、直を見る。
直は、手を振らない。
ただ、視線だけで見送る。
——離れるけど、終わらない。
ひかりは、
その確信を胸に抱いたまま、
搭乗口へ向かった。
次に会う約束は、
もう、ちゃんと決まっている。
驚くほど穏やかだった。
会話は多くない。
でも、沈黙が重くならない。
信号待ちのたびに、
直の指先が、ひかりの手に触れる。
離す気がない、という触れ方。
チェックインを終えて、
搭乗口の前まで来ると、
さすがに足が止まった。
「ここまででいい」
直が言う。
ひかりは頷いた。
行ってほしくない、とは言わない。
引き止める理由も、もうない。
直は一歩近づいて、
ひかりの前に立つ。
「ちゃんと帰るから」
「うん」
「ちゃんと待つから」
それも、言い切りだった。
次の瞬間。
直は、ひかりの顎にそっと手を添えて、
迷いなく口づけた。
短くて、静かなキス。
ひかりは一瞬、目を見開く。
「……ここ、空港」
小さく言うと、
直は少しだけ悪戯っぽく笑った。
「海外だから」
理由になっていないのに、
なぜか納得してしまう言い方。
直は、ひかりの額に軽く触れてから言う。
「一つだけ約束」
「なに?」
「寂しかったら、我慢しないで」
声が、少しだけ低くなる。
「電話して」
ひかりは、少し間を置いてから頷いた。
「……直もね」
「俺はする」
即答だった。
「多分、想像より早く」
ひかりが笑う。
「じゃあ」
一呼吸。
「次は、私が帰る番」
直の目が、少しだけ和らぐ。
「待ってる」
それだけで、十分だった。
搭乗の案内が流れる。
ひかりは一歩下がって、
最後にもう一度、直を見る。
直は、手を振らない。
ただ、視線だけで見送る。
——離れるけど、終わらない。
ひかりは、
その確信を胸に抱いたまま、
搭乗口へ向かった。
次に会う約束は、
もう、ちゃんと決まっている。