祝福のあとで
直side
カウンターの内側から見る店内は、
いつもよりずっと騒がしかった。
グラスの音。
笑い声。
普段は流さない、少しだけ派手な選曲。
二次会仕様の夜。
直は、
手を止めずにドリンクを作りながら、
客の顔を一人ずつ、無意識に確認していた。
ほとんどは、
今日の主役の知人か、
そのまた知人。
でも。
視界の端に、
一人だけ、引っかかる顔があった。
知っている気がする。
でも、すぐに名前が出てこない。
常連でもない。
業者でもない。
——どこでだ。
直は、
氷を落としながら、もう一度だけその方向を見る。
その瞬間、
向こうも、こちらを見ていた。
目が合う。
ほんの一拍。
相手の方が、先に小さく笑って、
グラスを持ったままカウンターへ近づいてきた。
「こんばんは」
距離の取り方が、妙に慣れている。
「覚えてます?」
その言い方で、
直の中の記憶が、少しだけ動いた。
「……すみません」
正直に言う。
「どこかで、お会いしました?」
相手は、気を悪くした様子もなく、
軽く肩をすくめた。
「ですよね」
それから、思い出させるように続ける。
「ルミエールで、一度」
その名前を聞いた瞬間。
——あ。
直の手が、わずかに止まる。
「……ああ」
遅れて、顔と場面が繋がる。
式場のロビー。
打ち合わせの合間。
ひかりの隣にいた男。
「その節は、どうも」
直は、視線を上げて、相手を見る。
「バーテンダーさんでしたよね」
確認するみたいな口調。
「ええ」
直は短く答える。
「今日は、二次会で」
それだけ言って、
また手元に視線を戻した。
——なるほど。
そう思ったのは、
相手の言葉じゃない。
さっきから、
ひかりのいるテーブルを、
この男が何度か見ていることに気づいたからだ。
直は、グラスを差し出しながら、
あきの顔を、もう一度だけ見た。
ここから先、
少しだけ面倒な夜になる。
そんな予感が、
氷の溶ける音と一緒に、胸の奥に落ちた。
カウンターの内側から見る店内は、
いつもよりずっと騒がしかった。
グラスの音。
笑い声。
普段は流さない、少しだけ派手な選曲。
二次会仕様の夜。
直は、
手を止めずにドリンクを作りながら、
客の顔を一人ずつ、無意識に確認していた。
ほとんどは、
今日の主役の知人か、
そのまた知人。
でも。
視界の端に、
一人だけ、引っかかる顔があった。
知っている気がする。
でも、すぐに名前が出てこない。
常連でもない。
業者でもない。
——どこでだ。
直は、
氷を落としながら、もう一度だけその方向を見る。
その瞬間、
向こうも、こちらを見ていた。
目が合う。
ほんの一拍。
相手の方が、先に小さく笑って、
グラスを持ったままカウンターへ近づいてきた。
「こんばんは」
距離の取り方が、妙に慣れている。
「覚えてます?」
その言い方で、
直の中の記憶が、少しだけ動いた。
「……すみません」
正直に言う。
「どこかで、お会いしました?」
相手は、気を悪くした様子もなく、
軽く肩をすくめた。
「ですよね」
それから、思い出させるように続ける。
「ルミエールで、一度」
その名前を聞いた瞬間。
——あ。
直の手が、わずかに止まる。
「……ああ」
遅れて、顔と場面が繋がる。
式場のロビー。
打ち合わせの合間。
ひかりの隣にいた男。
「その節は、どうも」
直は、視線を上げて、相手を見る。
「バーテンダーさんでしたよね」
確認するみたいな口調。
「ええ」
直は短く答える。
「今日は、二次会で」
それだけ言って、
また手元に視線を戻した。
——なるほど。
そう思ったのは、
相手の言葉じゃない。
さっきから、
ひかりのいるテーブルを、
この男が何度か見ていることに気づいたからだ。
直は、グラスを差し出しながら、
あきの顔を、もう一度だけ見た。
ここから先、
少しだけ面倒な夜になる。
そんな予感が、
氷の溶ける音と一緒に、胸の奥に落ちた。