祝福のあとで
*
ひかりは、
テーブル席に戻りかけて、足を止めた。
カウンターの方で、
直とあきが話しているのが見えたからだ。
二人の距離は近くない。
声も、荒れていない。
それなのに。
あきが、
少しだけ楽しそうに笑ったのが見えた。
ひかりは友達の輪に居るあきに話しかけた。
「……あき」
名前を呼ぶと、
あきが振り返る。
「なに?」
軽い声。
ひかりは、
表情を崩さずに言った。
「余計なこと、話してないよね?」
冗談みたいな口調。
でも、目は笑っていない。
あきは、
一瞬だけ驚いた顔をしてから、
すぐに肩をすくめた。
「なにそれ」
「安心してよ」
グラスを揺らしながら。
「昔話、ちょっとしただけ」
ひかりは、
それ以上聞かなかった。
「……そう」
短く返して、
視線を切る。
そのやり取りを、
カウンターの内側から、直は見ていた。