祝福のあとで



ひかりは、
テーブル席に戻りかけて、足を止めた。

カウンターの方で、
直とあきが話しているのが見えたからだ。

二人の距離は近くない。
声も、荒れていない。

それなのに。

あきが、
少しだけ楽しそうに笑ったのが見えた。

ひかりは友達の輪に居るあきに話しかけた。


「……あき」

名前を呼ぶと、
あきが振り返る。

「なに?」

軽い声。

ひかりは、
表情を崩さずに言った。

「余計なこと、話してないよね?」

冗談みたいな口調。
でも、目は笑っていない。

あきは、
一瞬だけ驚いた顔をしてから、
すぐに肩をすくめた。

「なにそれ」

「安心してよ」

グラスを揺らしながら。

「昔話、ちょっとしただけ」

ひかりは、
それ以上聞かなかった。

「……そう」

短く返して、
視線を切る。

そのやり取りを、
カウンターの内側から、直は見ていた。
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