祝福のあとで
気づけば、
そのあと一緒に出かけたブランチのことを、
ひかりはよく思い出す。

直の車で、
少しだけ遠回りして向かった店。

特別じゃないのに、
なぜか覚えている朝。

あとになって思えば、
理由は、たぶん簡単だった。

昨日の夜でもなく、
さっきのキスでもなく。

あの朝が残っているのは、
その先の時間を、
自然に一緒に過ごしていたからだ。

信号待ちで、
ハンドルにかけられた直の手。

「この道、混みやすいからさ」

そう言って、
少しだけ気楽な口調になる。

「時間、大丈夫?」

敬語じゃない声。

ひかりは、
そのときは深く考えなかった変化に、
あとから気づいて、
胸の奥が小さく揺れた。
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