先輩、好きです。
山岸が何か告げ口をした可能性もある。
けど、それ以上に山岸がそんな回りくどいことをするとは考えられなかった。
そもそも、山岸はそんな気を遣えるようなやつじゃないはずだ。
「……いや、大丈夫。あと少しだから」
私は疑いのあまり、矢吹の申し出を断った。
しかし────
「いえ、持ってきたの、俺なので」
静かだけど、どこか語尾に力がこもっていた。
それ以上、押しつけがましい態度はない。
ただ、自分なりに筋を通そうとしているような、妙な真面目さがそこにはあった。
私は少しだけ口を開けたまま、言葉に詰まった。
無愛想でそっけないくせに、こういうときは律儀って、こいつはどういう性格してるんだろう。
「…じゃあ、ボールかご中に運んでもらおうかな」
結局、何を言っても聞かないような気がして、私は矢吹の申し出を受け入れることにした。
矢吹は小さく頷くと、無言のままボールかごを準備室に運ぶ。
正直、一人で運ぶには重かったから助かっている。