先輩、好きです。
「…ありがと」
背中越しにそう言うと、矢吹は小さく息を呑むように「…いえ」と返事をした。
ちゃんと返事をしてくれたことが少し意外で、なんだか胸の奥がほのかに温かくなった。
────なんだ、普通に良いやつじゃん。
「…さっきのプレーもよかったよ。悔しいけど、やっぱり見惚れちゃう」
口に出すのは照れくさかったけど、それでも今なら伝えられると思った。
矢吹の無愛想さを知ったうえで、それでも私はこいつのプレーに心を奪われてしまう。
それはもう、どうしようもない事実だ。
それならいっそ、このかわいくない後輩の無愛想さも受け入れてしまおう。
「性格は全然だけどね」
軽く笑ってそう付け加える。
振り返った矢吹の目は、ほんの少し見開かれていた。
私は先輩だから、後輩の態度の一つや二つくらい大目に見てあげるべきなんだろう。
「さ、片付けも済んだし、戻ろっか」
準備室の扉に手をかけたそのとき、背後から低い声が聞こえた。