先輩、好きです。
「先輩」
不意に背後から声をかけられて、備品を戻す手が止まった。
振り返ると、そこには矢吹の姿があった。
「…え?何、どうしたの?」
予想外の相手に、間抜けな声が出た。
部員たちは今頃ストレッチをしているはずだ。
なにより矢吹が自分から私に話しかけてくると思わなかった。
「ボール、持ってきました」
矢吹は淡々とした口調でそう言うと、両手でボールかごを軽く押して見せた。
私が後で取りに戻るつもりで体育館に置いてきたやつだ。
────まさか、持ってきてくれたの?
あんなに無愛想だったやつが、こんなに親切なことをしてくれるのが信じられない。
「片付け、手伝います」
その言葉もまた抑揚がなくて、まるで誰かに言わされているみたいに聞こえる。
おかしい。
どう考えても、矢吹がこんなことするとは思えない。