先輩、好きです。
分からない後輩
昨日のことを考えないようにしている、という自覚はあった。
なのに、ふとした拍子に思い出してしまう。
――――先輩、好きです。
あの低い声と、あのひと言。
思い出すたびに、胸の奥がむず痒くなる。
いや、むず痒いなんて生やさしいものじゃない。
思考が一瞬で止まって、代わりに変な熱だけが残る。
ありえない。
そう何度も頭の中で否定しているのに、記憶はやけに鮮明だ。
「おーい、聞いてる?」
突然、視界にひらひらと手が現れて、はっと顔を上げた。
「……え?あ、なに?」
目の前には、タオルを肩にかけた山岸。
少し呆れたような、でもどこか面白がってる顔をしている。