先輩、好きです。
戻る場所を見失ったみたいに、また同じところに視線が落ちていく。
矢吹は、入出と向かい合って何か話していた。
小脇にボールを抱えながら、大きなTシャツの袖口で額を拭っている。
少し前までは、誰とも話そうとしていなかったはずだ。
特に、入出のようなタイプとは距離をとっているように見えた。
────急に、なんでなんだろう。
昨日から、矢吹勝利という人間が分からない。
あの告白だってそうだ。
無駄な言葉を一切使わないくせに、どうしてあんなひと言を残したのか。
冗談にしては性質が悪すぎるし、本気にしては説明がなさすぎる。
────分からない。
「何見てんだ?」
すぐ隣から声が落ちてきて、肩がびくりと跳ねる。
顔を向けると、山岸が私の目線に合わせるように身をかがめていた。
そのまま何気ない動作で、私の視線を追うようにコートの方へ目を向ける。