先輩、好きです。
別に、見ていただけだ。
ただぼんやり視界に入っていただけ。
そう言い訳はいくらでもできるのに、矢吹を見ていたのがバレるかもしれないと思った瞬間、それらは全部きれいに消えてしまった。
「っ、な、なんでもない!」
焦る気持ちを落ち着ける暇もなく、逃げるようにコートから背を向ける。
今は仕事に集中しなきゃ────そう自分に言い聞かせて近くにあった空のボトルを掴んだ。
そのままウォータージャグの前まで駆け寄り、レバーを引く。
次の瞬間、勢いよく飛び出した水がボトルの縁に当たり、弾けるように跳ねた。
「冷たっ!」
冷たい水しぶきが手元から袖口へと一気に広がった。
慌ててレバーを戻すが、濡れた指先からはぽたぽたと水滴が垂れている。
突然の出来事に呆然としていると、背後から山岸の笑い声が聞こえた。
「お、お前っ……ほんと今日どうした……」