先輩、好きです。




別に、見ていただけだ。


ただぼんやり視界に入っていただけ。



そう言い訳はいくらでもできるのに、矢吹を見ていたのがバレるかもしれないと思った瞬間、それらは全部きれいに消えてしまった。




「っ、な、なんでもない!」




焦る気持ちを落ち着ける暇もなく、逃げるようにコートから背を向ける。



今は仕事に集中しなきゃ────そう自分に言い聞かせて近くにあった空のボトルを掴んだ。

そのままウォータージャグの前まで駆け寄り、レバーを引く。




次の瞬間、勢いよく飛び出した水がボトルの縁に当たり、弾けるように跳ねた。




「冷たっ!」




冷たい水しぶきが手元から袖口へと一気に広がった。

慌ててレバーを戻すが、濡れた指先からはぽたぽたと水滴が垂れている。



突然の出来事に呆然としていると、背後から山岸の笑い声が聞こえた。




「お、お前っ……ほんと今日どうした……」
< 20 / 35 >

この作品をシェア

pagetop