先輩、好きです。
頼んでもいないのに世話を焼いてきて、文句を言うと笑う。
昔からそうだ。
私が何を言っても、この男は自分のやりたいようにする。
私は抵抗するのを諦めて、そのまま大人しく手を預けることにした。
山岸が満足そうに鼻を鳴らし、最後に指先をひと拭きする。
「よし」
「最初から人の話聞く気なかったでしょ」
「まあな」
悪びれもせず返されて、思わず顔をしかめる。
こいつの勝手気ままさは今に始まったことじゃない。
二年前、私の入部届に勝手に『男子バスケットボール部マネージャー』とサインして持ってきたあの日と比べれば、大体のことはマシだ。
「ほら、ちゃんと拭いとけよ」
「分かってる」
私が雑巾を受け取ると、山岸は使ったタオルをコート脇に放り投げてそのままコートに戻って行った。
床に飛び散った水滴を雑巾で拭きながら小さく息を吐く。
────なにやってんだろ。
雑巾を握る手に力を込める。