先輩、好きです。
しっかりしろ桜井汐織。
今は練習中だ。
考え事をする時間じゃない。
顔を上げると、休憩を終えた部員たちが少しずつコートへ戻り始めていた。
散らばったボトルを回収しようと視線を巡らせる。
その途中で、フリースローライン辺りに立つ一つの背中に目が留まった。
別に探していたわけじゃない。
むしろ見ないようにしていたはずなのに、気づけば視線はそこへ向かってしまう。
一定のリズムで床を打つボールの音。
矢吹は片手でドリブルを続けながら、静かにゴールを見上げていた。
何かを考えているようにも見えるし、何も考えていないようにも見える。
横顔からですら何も読ませてくれない。
無愛想で、扱いづらくて、それなのに誰よりも目を引く。
────何を、考えているの?
そっと心の中でつぶやく。
その瞬間だった。
まるで聞こえたかのようなタイミングで、矢吹がこちらを向いた。