先輩、好きです。
視線が重なったほんの一瞬で、心臓に火花が散る。
小さな熱は瞬く間に胸いっぱいへと広がり、息を奪っていく。
────見られた……!
とっさに視線を手元の雑巾に落とす。
けれど耳の奥では、自分の心臓の音ばかりが響いていた。
無感情な瞳が、脳裏に焼き付いて離れない。
熱に浮かされることもないような冷めた眼差しを向けるくせに、あいつの口はタチの悪いことを言って私を惑わせたんだ。
ぐっと唇を結び、雑巾をバケツの中に放り込む。
みっともなく暴れ続ける心臓を落ち着けようと、私はコートのあちこちに放置されているボトルを回収してまわることにした。
動いていれば、余計なことを考えなくてすむ。
「今日もいるじゃん」
「ほんとだ」
ふと、耳に馴染みのない高い声が聞こえた。