先輩、好きです。
呑気な声と同時に、額にぱちんと小さな衝撃が走る。
不意打ちに思わず顔をしかめた。
じん、と遅れて痛みが広がる。
額を押さえて顔を上げると、山岸は肩をすくめて笑っていた。
「ほら、もう休憩終わるぞ。シャキッとしろよ」
そう言いながら、隅に脱ぎ捨ててあったジャージの上着をひょいと拾い上げる。
そして、それを私に向かって軽く放り投げた。
軽く弧を描いたジャージを、反射的に受け取って首をかしげる。
「え、なに」
「袖」
短くそれだけ言われて、自分の袖口を見る。
さっきジャグの水をかぶった袖口が、まだじっとりと手首に張り付いていた。
「濡れてるだろ。乾くまで貸してやる」
気遣ってるのか、それともただ目についただけなのか、よく分からない言い方。
深く踏み込んでこないくせに、こういうところには抜け目がない。