先輩、好きです。
「……別に、平気だったのに」
ぼそりと呟きながら、袖口の濡れた自分のジャージを脱ぎ、山岸のジャージに袖を通す。
鼻先をくすぐる、私とは違う匂い。
柔軟剤と、少しだけ汗の混ざった匂いがして、思わず息を止めた。
袖は長すぎて、指先なんてまったく出ない。
裾も太ももにかかるくらいで、ぶかぶかだ。
私よりずっと背が高くて、体も大きいんだから当たり前なんだけど。
ーーーー山岸って、こんなに大きかったっけ。
ちらりと視線を向けると、山岸はもうコートに入って、部員と笑いながら話していた。
その背中をぼんやり眺めながら、私は小さく息を吐く。
さっきまで胸をかき回していた熱だけが、少しだけ遠のいた気がした。