先輩、好きです。
「これ」
矢吹はそう言って、手に持っていたものを差し出す。
それは、私のストップウォッチだった。
「ベンチに忘れてました」
「……あ」
間の抜けた声が出て、肩の力が一気に抜ける。
身構えていた自分が途端に恥ずかしくなった。
「…ありがとう。わざわざ」
「近くにあったので」
それきり。
告白のことも、今日のことも、何ひとつ触れない。
――――何を、警戒してたんだろ。
勝手に意識して、勝手に緊張して。
私めちゃくちゃバカみたい。
顔が熱くなるのをごまかすように、ストップウォッチを受け取りながら口を開く。