先輩、好きです。
そんな思考の渦中で、言葉が聞こえてくるよりも先に、視界の端で何かが動くのが見えた。
そっと視線を向けると、目の前には低く差し出された手。
その上には、見覚えのある黒いストップウォッチが置かれている。
「……え?」
喉の奥から、間の抜けた声がもれた。
さっきまで胸の奥を締め付けていた緊張が、一気に行き場を失う。
――――あれ。
脳内でいくつもの疑問が浮かび上がり、矢吹の持つストップウォッチを凝視する。
手のひらになじむ楕円形の黒いボディ、ボタンの配置や文字盤のデザイン。
液晶画面の端についている小さな傷までも、全部覚えている。
そしてなにより、液晶画面の下に貼られた桜の形をしたシールは、私のものである証拠として私が貼ったものだ。