先輩、好きです。
手が自然と自分のジャージのポケットに伸びる。
どれだけ探っても、そこにあるはずの固い感触はない。
「体育館に忘れてました」
矢吹の落ち着いた声が、脳内の疑問を一気にほどいた。
そういえば、今着ているのは山岸のジャージだ。
自分のジャージを脱ぐときにポケットから出した覚えはある。
そのあと、ポケットに戻した記憶がない。
きっと脱いだ時のまま体育館に置きっぱなしにしていたんだ。
「…ありがとう」
ストップウォッチを受け取りながら、小さく礼を言う。
手の中の感触はいつもと同じなのに、胸の奥だけが妙に落ち着かない。
「……すみませんでした」