先輩、好きです。
「じゃあ、お先に失礼します」
矢吹はそれだけ言って、何事もなかったかのように準備室を出ていく。
私は、その場に立ち尽くしたまま動けなかった。
告白は、確かにあった。
でも、返事は求められていない。
責任は自分にあると。
気にしなくていいと、先に線を引かれて。
――――分からない。
どうして、そんなに平気な顔ができるのか。
どうして、私だけが置いていかれたみたいな気分になるのか。
「…なんなの、ほんと」
ぽつりともれた声に、わずかに怒気が混じっていた。
なのに、ぶつける相手はそこにはいない。
返事のない静けさだけが、余計に腹立たしかった。