先輩、好きです。



ぽつりと落ちた声が、はっきりと耳に届いた。



淡々とした声からでは、謝意は感じられない。

けれどその言葉は、投げつけられたのでも、押し付けられたのでもなく、そっと控えめに置かれたみたいだった。




「昨日、余計なことを言って先輩に迷惑かけました」




その言葉に、胸の奥が小さく軋んだ。



確かに、あれがなければ私は、混乱して仕事に支障を出すこともきっとなかった。


矢吹は何を考えているのか分からないし、あんなタイミングでなんであんなことを言ってきたのかも分からない。



けど、少なくとも矢吹が、冗談であんなことを言うやつだとはとても思えない。



それなのに、あんたにとってあれは『余計なこと』ですませられるものだったの?
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