Toxic・Romance

 夜永さんのにおいは華やかで、やわらかくて。片桐さんとはぜんぜん違うのに、それでもからだの奥が勝手に思い出してしまう。あの夜の片桐さんの体温と首筋に触れたくちびるの感触を。

「あの、もう、あの、ありがとうございました……」

 そろそろと身体を離して、すとんとデスクに戻った。かわいらしいデスク周りに癒されながら、もう一度片桐さんのチャットをひらく。やっぱり、何度見ても、感動。思わず保護した。仕事のメールを。

 なぜなら、片桐さんのメールが、なんと。

 ちょっとだけ、丁寧になってる〜〜!!!!!

 以前の、冷たい氷の粒を投げつけられるような短文じゃない。ちゃんと私の体調を気遣う文言が入っている。しかも、無理に受ける必要はないなんて……!

 気が緩んだせいで返信を昼過ぎまですっかり忘れていたら、スマートフォンの画面が明るくなった。

《返事、まだ》

 LINE経由の、ダイレクトすぎる片桐さんの催促だった。

 えっと驚いて、自分の粗相に気づき、慌ててPCで仕事の正式な返信をすれば、片桐さんからは間髪入れずに《了解》とだけ一言届いた。

 丁寧なのは仕事用だけらしい。
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